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切断砥石とは判りやすく言うと、フライスの刃をごく小さくし、その刃数を相当に多くしたような高速回転切削工具と言えます。
切断砥石が他の切削工具と異なるところは、砥粒の刃先が切断加工の進行と共に磨耗、鈍化すると砥粒の小破砕や結合剤からの脱落がおこり、新しい切刃を生じます。この現象を「自生作用」と言い、同じ状態で高能率、高精度加工を保つ他の切削工具には見られない特有の性質を持ちます。
切断砥石は主に3つの要素から構成されています。それは切削工具類の切刃に相当する【砥粒】とその砥粒を保持している【結合剤】と切断の際に切粉の逃げとなる【気孔】です。
この要素をうまく組み合わせることにより能率の良い切断作業が可能となります。
ワイズマシンの切断機に使用する切断刃の中で最も多いのがこの切断砥石になります。
切断材料や作業内容により、補強布入りや補強布無しの極薄切断砥石を使いわけたり、乾式切断や湿式切断どちらにも対応が可能です。
次に切断砥石を選定するに当たり基本的な知識を記します。
Ⅰ)切断砥石の表示例
切断砥石は製造メーカーにより若干の違いは有りますが、概ね下記のように表示されます。
WA | 120 | N | B | 255×1.2×31.75 |
砥粒の種類 | 粒度 | 結合度 | 結合剤の種類 | 外径寸法×厚さ×内径寸法 |
Ⅱ)切断砥石の選定方法
切断砥石の選定は、砥粒、粒度、結合度をさまざまに組み合わせる事によりさまざまな材質や硬度、作業内容への対応が可能となります。
一般的な切断砥石の選定方法を下記に示しますが、あくまで参考としてご覧ください。使用する機械や各種条件によって変わることがあります。また、切断砥石メーカーが異なると同じ表示であっても使用感が異なることがあります。
a.砥粒の選定
代表的な砥粒として下記の4種類が有りますが、その他に砥粒にダイヤモンドを使用したものや砥石メーカーオリジナルの混合砥粒もあります。
主な切断用途を記していますが、あくまで一般的な目安です。例えばステンレスの細径パイプなどはGC砥粒の方が適している場合などが有ります。切断をご希望になる材料を砥石メーカーにお問い合わせになるか弊社にお伝えいただきましたら選定のアドバイスをさせていただきます。
砥粒の種類 | 呼び名称 | 主な切断用途 |
A | アランダム | 一般軟鋼材・一般炭素鋼など |
WA | ホワイトアランダム | 焼入鋼・特殊鋼・ステンレスなど |
C | カーボランダム | 鋳鉄・非鉄金属など |
GC | グリーンカーボランダム | 硬脆非金属 (ガラス・磁性材料・カーボンなど) |
b.粒度の選定
一般的な切断砥石の粒度としては、下記のような粒度が有ります。
24 | 36 | 46 | 60 | 80 | 100 | 120 | 150 | 180 | 220 | 240 | 320 | 360 | 400 |
選定の目安としては、切断負荷の大きい作業や能率優先高速度作業には粗目を使用し、精密作 業には細目を使用します。
粗目の場合、切断面は粗くバリ・カエリの発生が大きくなります。切れ味は良くなります。
細目の場合、切断面は滑らかでバリ・カエリの発生が少なくなります。切れ味は悪くなります。
一般的に入手しやすい粒度は、
補強布入り切断砥石で#36〜#60あたりのもの
補強布無し切断砥石で#100〜#150あたりのもの
また、粒度により製造できる砥石の厚さに制約が有りますのでメーカーに確認してください。
c.結合度の選定
結合度とは砥粒と砥粒を結合している強さの程度を言います。
アルファベットのA〜Zまでで、Aに近いほど軟らかい結合度、Zに近いほど硬い結合度となり、各切断砥石メーカーによって対応の範囲が異なります。
概ねH〜U位の範囲までが一般的な製造範囲と思われます。
一般に砥石が硬いとか軟らかいと言われるのは結合度の事で、砥粒の硬さを言うのでは有りません。
選定の一般的目安としては硬い材料を切断する場合は軟らかい結合度、軟らかい材料を切断する場合は硬い結合度を選定します。
結合度が硬い場合は砥石寿命を優先、軟らかい場合は切れ味優先となります。
また、結合度が同じでも回転速度が速いと硬く、反対に遅いと軟らかく作用し、切断速度が速いと軟らかく、反対に遅いと硬く作用します。
このように切断砥石の選択で一番重要なのはこの結合度の選択となります。
d.結合剤の種類
研削用の砥石に比べ切断砥石に使用される結合剤の種類は少なく、現在流通している切断砥石に使用されている結合剤の大部分は熱硬化性樹脂ベークライトを主体としたもので(B)と標記されます。
総称としてはレジノイドやレジンと言われる事が多く、これは熱硬化性樹脂を意味するレジンからきていると思われます。
その他の結合剤としては生ゴムを加硫成型したものでラバー砥石と言われるものが有ります。
e.砥石の寸法
砥石寸法は機械に合わせて選定することになりますが、内径寸法はほとんどがインチサイズになっています。代表サイズは下記の通りです。
ミリ寸法 | 12.7 | 15.88 | 19.05 | 22.23 | 25.4 | 31.75 | 38.1 | 50.8 |
インチ呼び名 | 4分 | 5分 | 6分 | 7分 | 1インチ | 1インチ2分 | 1インチ4分 | 2インチ |
外径の表記はミリサイズになっていますが、
150mm→6インチ ・ 205mm→8インチ ・ 255mm→10インチなどと呼ぶことも業界では一般的になっています。
以上を切断砥石選定の参考にしてください。
より良い切断作業のためには、切断砥石メーカーや機械製造メーカーとご相談の上選定されることをお勧めします。
補足
切断砥石は品質や価格において、メーカーにより一長一短が有ります。製造ラインにおいてはコストパフォーマンスを突き詰めて行く必要が有りますので、色々なメーカーでサンプルを取り寄せてテストをして行く必要もあるかと思います。
また、試料切断などの現場においては、比較的安易な切断作業には価格の安い切断砥石を使用し、「ここぞ」と言うような精度や切れ味を要求される切断作業には品質優先の切断砥石を使用するというような使い分けも賢い選択になると思います。
いずれにいたしましても、世の中には切断砥石メーカーが数多く有り、それぞれの特徴を有していますので、御社の切断作業に適切なアドバイスができる切断砥石メーカーや販売店とお付き合いされる事が必須になります。
弊社も数社の切断砥石メーカー、販売店とのお付き合いがございますので切断砥石だけでのご相談でもメーカーや販売店をご紹介させていただくこともできます。
精密切断機、試料切断機の専門メーカーとしてさまざまな素材に対応し、分析・開発から生産用途の切断作業にも「こんな切断機が有ったら」を形にして標準機から特注機まで柔軟な発想でご提案します。
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